sora'papaこの日、盛岡は昨夜の雪で一面真っ白に清められて輝いていた
うえを見上げれば晴れわたった青空 12時30分、分娩室、ついに出産の処置が始まった
と、思ったら10分ほどで看護婦さんがでてきた
え!
「ん~、まだですね、やっぱり数時間かかるかも、でも、このまま分娩室ね」
「ほぇ・・・」
それから十数分後、またまた
「もぅ、産まれますぅ」と走り去る看護婦さん
「ふぉ・・・」
分娩室からは助産婦さんのかけ声にあわせていきみ声がかすかに漏れてくる
いよいよか!
ところが、数分後、突然、
「ピィーーーーーーピィーーーーーーピィーーーーーー」
分娩室の奥から警報音が鳴り響く
看護婦さんが分娩室から飛び出してきた
目の前を無言で走り去る
しばらく、バタバタとあわただしい院内
「ナニ?ナニ!ナニ?ナニ!ナンナノ、ナンナノ!!!」
その後、ひとりの看護婦さんが
「急に赤ちゃんの心音が低下したので一旦産むのをやめます、また時間おいて、、、」
と、そのまま走り去る
え・・・あ・・・え・・・
「えっ!なんなのそれ!」
いいようのない不安が渦巻く
しかしどうにもやり場がない
時刻は13時をまわっている、しばらくすると、また
「産まれますぅ」
と走り去ってゆく看護婦さん
厚く閉ざされた分娩室の扉にへばりつき、どうにもならない中の様子をうかがう
助産婦さんのかけ声、併せていきむ声がかすかに聞こえる
「ホラ、がんばって、おなかの赤ちゃんもつらいんだから!」
「んぐぅ、、、」
「ハイ!いきんでっ!」
「はうっ、、、」
「はい、深呼吸深呼吸、大丈夫大丈夫、みえてきたよぉ!」
「まだまだ、いきまないいきまない!、ゆっくり息吸って!」
そんなやりとりが続いていた
大丈夫か!、、、なんとか無事でいて!、、、母子共に!、、、なんとか!、、、
祈り、願う、
しかし、無力だ、、、、、
祈る以外にできることなどなにもない
でも、それがおとこというものなのだとあらためて思う
(立ち会いのための講習会も受けた、しかしここでは原則立ち会いはしていない)
やはりこれはこれで苦しいものだ
この苦しみはまた、男にしかわからないことなのかもしれない
期待、不安、祈り、、、期待、不安、祈り、、、
交互に打ち寄せる波にのみこまれそうだ
これほど強く祈り、願ったことがあっただろうか?
ほどなく、音の少なくなった分娩室からなんとなく聞こえた言葉があった
「ん~よくがんばったねぇ・・・」
「・・・!・・・?・・・」
それからしばらくして、ようやく
「フンギャー、ンギャー、ンギャー」
とうとう、産声があがった!
元気な男の子だ
よくドラマで見るシーンのようだ(音声のみだが)
でも、現実感があるようなないような
ふわふわした心地のなかにある種の充実感が少しずつこみ上げてくる
待望のいのち、、、
無事でいてくれて良かった、、、
ありがとう、、、
だれにともなく感謝の念が漏れる
おもうことはただただ、それだけ
それまでの不安は嘘のように溶けて消えてゆく
「やった!」
おもわずつぶやいていた
なんどもなんどもつぶやいていた
そして、後日、衝撃的事実が医師から明かされた
診断書に書かれた
「異常分娩、胎児仮死」の文字
医師は妊婦や家族の動揺を考慮してその場では告げなかったようだ
大きな苦難を乗り越えて、無事でいてくれたことに一生感謝します
sora誕生!
2007年12月14日13時46分 蒼天
2,874g 49.0cm A型